知的障がい者サッカー女子日本代表UAEとの交流親善マッチ
知的障がい者サッカー女子日本代表チームが初の海外遠征としてアラブ首長国連邦(UAE)に渡航し、スペシャルオリンピックスUAE女子ユニファイドフットボールチームとの交流親善マッチを行いました。
大会概要
◆名称:
2023年12月女子日本代表UAEとの交流親善マッチ(日UAE女子フットボール交流プログラム 英名:UAE – JAPAN Women’s Football Friendship Program)
◆日時:
12月5日(火)、6日(水)、7日(木)※現地時間
◆場所:
UAE Football Association National Training Center in Dubai
監督・選手コメント
稲葉政行 監督(日本知的障がい者サッカー連盟【JFFID】)
一般財団法人日本国際協力センター(JICE)主催の下、昨年度に引き続き、スペシャルオリンピックスUAE女子ユニファイドフットボールチームとの交流プログラムが実現しました。昨年度は日本のホーム開催でしたが、今年度はUAE開催となり、女子日本代表チームとしては初の海外遠征となりました。6月開催のナショナルトレセン参加選手22名の中から8名が選考され、11月4日(土)の事前練習会および現地入りしてからのトレーニングで準備を進めてまいりました。また、ユニファイドとして知的障がいではない選手(パートナー)と知的障がい選手(アスリート)との融合も図りました。
ユニファイドフットボールのルール上の大きな特徴は、①オフサイドがないこと、②すべて間接フリーキックになること、③GKはキャッチしたらすべてスローで再開すること等があります。特にオフサイドがないことへの適応は大きく、ライン間をある程度コンパクトにしつつも背後のスペースを相手に使われることのないよう留意する必要があります。他方、奪ったら素早く攻撃できる点を踏まえ、日本チームは、中盤でボールを奪う守備を基本コンセプトとし、ボールを中心とした守備陣形からサイドに誘導して奪ったボールを、逆に相手の守備陣形が整う前にショートカウンターで中央突破し、中央を固められたらサイド攻撃も組み合わせるようにしました。また、サイドで奪いきれない場合は、DFとGKで最終ラインの背後をケアしつつ攻撃を遅らせて帰陣&プレスバックしてコンパクトさを保ち、ゴールを守る数的優位を作ってから再び粘り強く奪い、ビルドアップして攻撃することにもトライしました。昨年度から継続しているコンセプトですが、より精度を高め、攻守の切り替えも素早くするようにしました。
【第1戦 ユニファイド 7人制 20分ハーフ】
UAE 0-0 日本
第1戦は立ち上がりから高強度の拮抗したゲームとなりました。中盤に網を張る日本チームを避けるようにキック力を全面に出し、パワーとスピードで日本のDFラインの背後を狙うUAEと、コンパクトな陣形からセカンドボールを回収しショートカウンターを狙う日本という、両チームの狙いのはっきりしたゲームとなりました。お互いに決定的なチャンスを迎えるもノーゴールに終わり、初戦は0-0のドローでした。
【第2戦 アスリート(知的障がい選手) 5人制 15分ハーフ】
UAE 0-3 日本(得点者:鈴木理惠2、後藤千尋)
続く第2戦は、お互いに相手の出方を伺う立ち上がりから徐々に日本チームがペースをつかみ、ボールを効率よく動かしながら得点チャンスを多く作り出し、前半で3得点を奪い日本が3-0と勝利しました。
【第3戦 ユニファイド 7人制 20分ハーフ】
UAE 2-0 日本
第3戦は最終戦ということもあり観戦者も多く、これまでの2試合とはまた違ったアウェイの雰囲気の中での試合となりました。お互いに第1戦の分析を経ての対戦となり、UAEチームはDFの枚数を増やしサイドに運動量のある選手を配置し、日本チームのショートカウンターを阻止しつつ縦に速く幅を使った攻撃を仕掛けてきました。対して日本チームは、UAEチームのスピードに対抗するためにラインをやや下げ、サイドの枚数をマッチアップできるようにシステムを変え、加えてUAEチームのライン間が間延びしたところを突破するようにして対抗しました。地元の声援を受けて前に出るUAEチームの圧力に次第に押される展開となり、前後半に1点ずつコーナーキックから失点を重ねてしまいました。地元の邦人チーム・ドバイブルーさんを中心とした「ニッポン」コールが鳴り響く終盤、勇気づけられた日本チームも前からボールを奪う守備に出て攻勢に出ますが、こぼれ球がポストに阻まれるなど、あと一歩のところで得点が奪えず、そのまま0-2で試合終了となりました。
【総括】
通算成績は1勝1敗1分けでした。UAEチームは、スピード、キック力を含むパワー、体格(手足の長さ・コンタクトの強さ)で日本チームを圧倒しており、今回の対戦では日本チームのテクニックと俊敏性、攻守の切り替え、組織力を簡単には発揮させてくれませんでした。体感した基準を世界スタンダードとし、①アウェイでも闘える冷静さとメンタリティー、②ボールの移動中のポジショニング修正、③素早い攻守の切り替え(4局面)、④プレッシャーを受けた中での技術と判断、⑤球際の強さ、の5つをポイントにして選手を育成していきたいと思います。
日本チームの選手たちは、日本代表エンブレムのユニフォームを着ることへの誇り、責任、感謝を感じ、全力でこの遠征を楽しんでいました。レセプション、在ドバイ日本国総領事館表敬訪問、フィールドトリップ、宿舎での食事等のオフザピッチプログラムは、ほとんどがUAE選手と合同でした。両国一緒に過ごす時間が長かったのも今回の特徴で、オフィシャル対応、外国人選手とのコミュニケーション、立ち居振る舞い、現地での生活習慣への適応、休息・食事・コンディションづくり等、オフザピッチの面でもたくましく成長し、大きな怪我や体調不良者もなく遠征を終えました。
最後に、交流親善マッチ開催にあたり多くのご支援とご声援をいただきました関係の皆様、そしてUAEの皆様には、この場をお借りして感謝と御礼を申し上げます。
引き続き知的障がい者サッカー女子日本代表へのご声援をお願い致します。
大塚恵美 選手(福岡県)
日本代表と同じユニフォームを着て試合に出ることに対する心の準備をして臨みました。そのおかげで試合に出た時は、最後まで絶対にあきらめない気持ちがとても強かったですし、自信を持ってコーチングできたことに自分自身でもびっくりしました。チーム一丸となってポジティブな声掛けができました。試合で気付いたことは、正確にパスすることやボールスピード、トラップは次にどこに置けばプレーしやすいのか等です。周りを見てどんな状況でも落ち着いて正確な判断ができるように練習しようと思いました。最後の試合でドバイブルーの方が試合を観に来て応援してくれて、本当に嬉しかったです。
福岡FIDや職場の方々、そしてお母さん、たくさんの人が全力でサポートしてくださったおかげで、UAE遠征に参加することができたと思います。感謝の気持ちでいっぱいです。9日間本当にありがとうございました。福岡でも頑張ります。
堀内美咲 選手(静岡県)
私のポジションはDFなので、相手がボールを持っていたら奪いに行くことと、相手にシュートを打たせないようにDFどうしやMFと相手のマークの受け渡しをすること、そしてマークを外さないようにすることをこの遠征で学びました。また、遠征に来て練習を積み重ねて、徐々にチームメイトや監督・コーチに質問できるようになり、これまで分からなかったことが分るようになりました。分らないことを聞けたことが今回の遠征で一番変わったことです。次に代表に選ばれたときは、今回より多く試合に出て自分のプレーを力いっぱい出したいと思います。
UAEに私たちを連れてきてくれた皆さん、私たちの親、温かく出迎えてくれたUAEの皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。いろいろなことを学び、知れた9日間だったと思いました。ありがとうございました。